Antioxidant Capacity Assay Kit シリーズ
キットの用途: | 検体の活性酸素消去能の評価・スクリーニング |
---|---|
対象の活性酸素種: | 一重項酸素、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル |
検体種: | 化合物、血清、血漿、細胞抽出物、動植物組織抽出物など |
特徴: | 化学発光による測定のため検体の色や蛍光の影響を受けにくい ホワイトプレートでの操作性を高めるため着色試薬を使用 所要時間1時間程度で測定 |
【背景】
活性酸素は狭義的に「一重項酸素」「スーパーオキシド」「過酸化水素」「ヒドロキシラジカル 」の4種類からなる酸化力の強い酸素分子種(Reactive Oxygen Species: ROS)で生体内において能動的および受動的に産生される(図1)。その特性から免疫系において細菌やウイルス等の外敵を破壊するために能動的に産生される。また、シグナル因子としても機能することが知られている。一方、紫外線暴露や酸素呼吸の場であるミトコンドリアでは副産物として活性酸素が発生する。しかし、能動的・受動的問わず過剰な活性酸素は生命体自身に損傷を与え癌や生活習慣病、老化の原因となることから抗酸化酵素や抗酸化物質により速やかに消去されバランスを保つ必要がある。
図1 生体における活性酸素発生過程
各活性酸素分子種の性質はそれぞれ異なり「一重項酸素」および「ヒドロキシラジカル」は不安定なものの反応性が高く細胞内では酸化損傷の主要因である。一方、「スーパーオキシド」および「過酸化水素」は反応性は低いものの安定性は高いことから生体内では長時間留まり、金属イオンや紫外線刺激により「ヒドロキシラジカル」生成の原因となっている(表1)。生体での発生組織はさまざまで「一重項酸素」は主に光の関与する皮膚で、他の活性酸素種は呼吸や代謝、炎症過程で発生する。
本キットは検体の活性酸素分子種に対する特異的消去能を評価するために4種の活性酸素それぞれを評価することができる。
表1 各活性酸素分子種の特徴
活性酸素分子種 | 安定性 | 反応性 | 生体での主な発生源 |
---|---|---|---|
一重項酸素 | 不安定 | 高い | 光/紫外線(皮膚) |
スーパーオキシド | 安定 | 低い | 酸素呼吸・炎症・代謝 |
過酸化水素 | 非常に安定 | 低い | 炎症・代謝 |
ヒドロキシラジカル | 非常に不安定 | 極めて高い | 光/紫外線・酸素呼吸・炎症・代謝 |
【測定原理】

対象とする活性酸素を発生させる。検証するサンプルが存在時に活性酸素は消去される。その後、対象とする活性酸素特異的に検出する化学発光プローブと反応させることで短時間で高感度に活性酸素残量を測定することができる。
【プロトコール概要】
プロトコールはシンプルで4ステップ(一重項酸素測定キットは5ステップ)で測定できる。サンプルと活性酸素溶液(ROS solution)を反応後にそれぞれの活性酸素種特異的に反応する化学発光プローブ(Detection solutionを用いて残存する活性酸素を検出することで抗酸化能を評価する。

【抗酸化能の評価】
抗酸化能の評価としてサンプルの活性酸素消去率やIC50値(50%阻害(消去)濃度)を算出する方法、抗酸化標準物質である没食子酸(Gallic acid)を用いた没食子酸等価活性値(Gallic acid equivalent antioxidant capacity: GAEAC)やTroloxを用いたトロロックス等価活性値(Trolox equivalent antioxidant capacity: TEAC )を算出する方法がある。
各キットを用いた代表的な抗酸化物質のIC50値を表2に示す。
表2 代表的抗酸化物質の各活性酸素に対するIC50値
抗酸化酵素・物質 | 一重項酸素 | スーパーオキシド | 過酸化水素 | ヒドロキシラジカル |
---|---|---|---|---|
Catalase | N.D. | N.D. | 30ng/mL | N.D. |
SOD | N.D. | 100ng/mL | N.D. | N.D. |
Trolox | 600μM | 130μM | 3μM | 5μM |
Glutathione | 50μM | 10mM | 1μM | 10μM |
N-Acetyl-L-Cysteine | 220μM | N.D. | 2μM | 150μM |
Ascorbic acid | 200μM | 170μM | 5μM | 5μM |
α-Lipoic acid | 2μM | N.D. | 100μM | 300μM |
Gallic acid | 950μM | 30μM | 1μM | 3μM |
Chlorogenic acid | 650μM | 1.5mM | 1μM | 1μM |
表3 果物・野菜・魚抽出物(水溶性成分)における抗酸化能評価
各キットを用いた果物・野菜・魚抽出物(水溶性物質)におけるGAEAC値およびTEAC値を表3に示す。
GAEAC (μmol GAE / mg protein) | ||||
---|---|---|---|---|
一重項酸素 | スーパーオキシド | 過酸化水素 | ヒドロキシラジカル | |
ミカン抽出液 | 6.25 | 1.2 | 0.1 | 0.75 |
ニンジン抽出液 | 1.97 | 0.86 | 0.01 | 0.01 |
緑茶抽出液 | 3.95 | 1.5 | 0.13 | 0.1 |
サケ抽出液 | 10.71 | 3 | 0.03 | 0.004 |
トマト抽出液 | 0.63 | 0.1 | 0.01 | 0.01 |
表2および表3に示すように同じ抗酸化物質や抽出物であっても活性酸素種によって消去能は異なる。
GAEAC (μmol GAE / mg protein) | ||||
---|---|---|---|---|
一重項酸素 | スーパーオキシド | 過酸化水素 | ヒドロキシラジカル | |
ミカン抽出液 | 5 | 5.2 | 0.3 | 1.25 |
ニンジン抽出液 | 1.58 | 3.71 | 0.03 | 0.01 |
緑茶抽出液 | 3.16 | 6.5 | 0.38 | 0.17 |
サケ抽出液 | 8.57 | 13 | 0.1 | 0.01 |
トマト抽出液 | 0.5 | 0.43 | 0.03 | 0.02 |
【キットの特徴】
表4 果物・野菜・魚抽出物(水溶性成分)における抗酸化能評価
従来法 | 難点 | 本キット | |
---|---|---|---|
活性酸素分子種全般 | スピントラップ法 | ESR装置が必要 | 発光測定機器 |
一重項酸素 | SOAC法 | 溶媒としてクロロホルム使用 | クロロホルム未使用 |
スーパーオキシド | 発色法 | 検体色が影響 | 検体色の影響を受けにくい |
過酸化水素 | 発色法 | ||
ヒドロキシラジカル | HORAC法 |
発光測定用のホワイトプレートでは試薬が無色透明の場合、添加ミスの可能性がある。本キットではミスを防ぐために試薬を着色しているために操作ミスを防ぐことができる。
本キットは従来の活性酸素測定法と比較してESR装置のような高価な機器を必要と発光測定機器で検証ができる。特筆すべき危険物質は使用していないため安全に試験することができる。さらに化学発光による測定のため検体の色や蛍光の影響を受けにくいのが特徴である(表4)。
